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白いコットンピケのワンピース

私は決心した。何としてでも結婚しよう。そしてまず最初にしたことは、協力してくれそうな友人たちに電話をかけることだった。私は彼らひとりひとりに、真剣に結婚したい意志があることを伝えた。そして、こんなことを頼むのはみっともないという気持ちと戦いながら「誰かいい人がいたら紹介して」と頼んだ。どんな人がいいの?と聞かれれば、生活のパートナーとして合いそうな人がいいと答えた。地道で堅実な人がいい。恋愛の相手は、もういらないのだった。母にこの話を切り出すのには勇気がいった。日頃、偉そうなことを言っていても結婚相手ひとり見つけることのできない情けない娘である。しかしある夜、思い切って見合いをしたいと話すと、母は意外なほどあっさりと「そう、いいんじゃない」と言い、「いろいろ聞いてみるわね」と明るく笑った。ホッとすると同時に襲われた、身悶えするほどの気恥ずかしさ。しかし、全身がむず痒くなるようなその感覚の中で、もうつまらないプライドは捨てるのだと自分に言いきかせていた。それから半年ほど経ったある初夏の午後。私は飯倉にあるホテルのロビーで、ひとりの男性を待っていた。彼を紹介してくれるのは、年長の女友達である。私たちは立ったまま入り口の方をずっと見つめていた。約束の時間が過ぎようとしているのに、彼がやってくる気配はない。また、だめかもしれない……。私は気分が落ち込んでいくのを止めることができなかった。この半年の間に何人かの男性と会ってきた。しかし誰ともうまくいかなかったのである。外はよく晴れて、初夏の陽射しが強い。その光の届かない薄暗いロビーで、この日のためにと買った白いコットンピケのワンピースや、白と黄のコンビの靴や、お揃いの小さなバッグがなんだか虚しく見えてくるのだった。十五分を過ぎても彼は来ない。来ないのなら、もう帰ろうかな……その前に母に電話をして……そう思って、入り口と反対側の廊下の方に目を移すと、こちらに向かって歩いて来る、ひとりの青年の姿が見えた。紺とベージュの太い縞のシャツに、カーキ色のコットンパンツ。足には濃い茶色のローファーをはいている。私はなぜだがその靴から目を離すことができなくなった。靴はリズミカルな調子で、どんどんこちらに近づいてくる。ふと何かが始まりそうな予感がした。茶色の靴は、私の前まで来るとピタリと止まった。