人びとの暮らしに中立的な住宅システムを組むために、住宅保障を拡大する政策が不可欠である。単線のライフコースを「普通の人生」とみなす住宅システムは、そこから外れる人たちに少量の援助しか準備しない。住宅困窮者が[救済に値する]かどうかという陰影な判定作業が繰り返され、住宅保障の守備範囲を圧縮する政策が続いた。政府が使い始めた「真の住宅困窮者」という言葉は「偽の住宅困窮者」が存在するという前提のもとでしか成立しない。
[参考情報]
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住宅困窮者を「真」と「偽」に区分けする作業は、いっそう陰影であるだけではなく、根拠説明を備えていない。住宅保障を充実させるには、住宅困窮の定義の再構築が必要になる。住宅困窮とは何かという問題の検討が不十分であるがゆえに、「真の住宅困窮者」の選別というような恣意的な政策の出現が可能になっている。第一に、住宅困窮の中身が時代によって異なる点をみる必要がある。政府は住宅建築の量と質を指標として住宅困窮を測っていた。終戦直後から一九八〇年代にかけて、物的住宅の劣悪さが深刻であったためである。そこでは住宅数と世帯数のバランス、住宅の広さ、居住密度、設備水準などが重要な指標であった。住宅数は世帯数を上回り、居住密度は低下した。