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彼女が不倫をやめた理由

お正月が不倫の恋人たちにとって、危機が訪れる年中行事なのは、間違いがないようだ。それでも、お正月はまだマシともいえる。毎年のことだけに覚悟ができているからだ。つらいのは、ふいに襲ってくる危機だという。たとえば、恋人が急に入院したとしよう。すると、不倫の関係にある恋人はお見舞いさえままならない。容態もわからないまま、ひとりで心配の日々を過ごさなければならない。そういえば、相手の入院が原因となって不倫の恋を清算した知人がいる。彼女が不倫関係にあった恋人と別れたと聞いたとき、私は「さては、お正月の危機を乗り越えられなかったな」と思ったのだが、そうではなく、彼が胃潰瘍で入院したことがきっかけになったのだそうだ。会社の同僚を装ってお見舞いに行くと、げっそりとした彼がいた。無精ひげが伸びて、口臭もひどい。おまけに、奥さんに頼りっぱなしで、だらしない子供のようになっていたという。それを見て、百年の恋も冷めたらしい。「奥さんはね、そんな彼のわがままをいやな顔もしないで聞いてんのよ。信じられる?」と、彼女は驚く。「もちろん」と、私は答えた。夫婦ってそういうものだろう。トイレを共有し、下着を洗い、くたくたにくたびれた姿を見ている夫婦は、病気くらいで気持ちに変化は生じないものだ。不倫している彼だって、奥さんが病気になったら、むげに彼女を投げ捨てたりはできないだろう。ボロボロのヨレヨレになっても、とりあえずは捨てられない。たとえ夫婦の間に争いが起きていても、危機的状況に陥ると、一時休戦して相手のために頑張ってしまう。それが夫婦というものだろう。私たちが考える以上に、夫婦はしぶといものだという気がする。彼女はそのしぶとさに負けてしまったのだ。夫婦のしぶとさ、なめないほうがいい。